「ラジオ深夜便」を聴きながら。

Masculin:聴いてらっしゃいます?

Féminin:ハイハイ、またすっかりアナタのせいで宵っ張りに戻っちゃったわ。こんな時間にしょっちゅう長電話してたお互い若かりし頃が懐かしいけど…カラヤンの特集でしょ。まあ案の定お馴染みの曲と演奏ばかりで。番組が番組ですものね。

M:我々も考えてみればそのリスナーの対象年齢真っ只中なんですけどね…アンカーM.H.アナの毎度の「いや~実に見事ですねえ、わたくし…」式のコメントも毎度の失笑もので…そう言えば映画評論家の故・水野晴郎氏と同じイニシャルなんだなあ、道理で似た口調かも。

F:最初のベートーヴェン7番フィナーレはベルリン・フィルとのステレオ一回目のでしょ。イエス・キリスト教会の残響が今となっては過多かも。アレグロ・コン・ブリオとしてもちょっと忙しいし。

M:「狩りのポルカ」はウィーン・フィルに上手く乗っかった感じだけど往年のベストセラー「惑星〜木星」は今聴くといかにも中途半端なやっつけ仕事だなぁ。縦の線は怪しいし、英国音楽でもなければブラヴーラなショウピースでもないし。デッカの辣腕プロデューサーだったジョン・カルショウの口車に乗っかった結果で。

F:「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲はスカラ座での全曲盤じゃなくオペラ間奏曲集からのでしょうけど、テーマが出たところであまりのレガート過剰で気持ち悪くなったわ。オルガンもクローズアップし過ぎだし。

M:「軽騎兵」序曲はまるで重装騎兵だけど極め付きでしょ?あんな愚駄曲をベルリン・フィルを駆使してあれほど全力投球で指揮したのはカラヤンだけですよ。牛刀を以ての典型だけど。「ペール・ギュント〜朝」は久しぶりに小学校の音楽の時間を思い出しましたね。ローカル色が強くならないのもカラヤン流で。

F:「悲愴」の第3楽章は何年の録音か言わなかったけど有無を言わさない感じね、良くも悪くもあれがカラヤンの流儀なんでしょうけど。アダージョ・ラメントーソの終楽章はいらないみたい…何だか眠くなってきちゃった…。

M:まあ1時間枠で巾広いリスナー対象の番組だから致し方ないんでしょうけど、もう少しひねりが効いてても…アレ?お姉様、もしもし!

F:ZZZ…

(Fin)